担当隊員:荒木淳
エリア:釜石市全域/地域福祉
目指すビジョン: 釜石のまちづくりに関わる
「買い物に行きたいけど、車が無い」「仮設住宅からバス停までの距離が遠く、すぐに出かけられない」…これらの問題を解決するべく、釜石市で新たに始まった公共交通サービスがオンデマンドバス(通称「にこにこバス」)です。オンデマンドバスとは、運行経路や時刻を需要に応じて対応させるという新しい交通手段です。震災から一年半が経過した2012年10月、釜石市は被災地支援プロジェクトを行うトヨタ自動車(株)との共同で、にこにこバスの実証実験を開始しました。
高齢者の多い釜石市では、交通手段の確保は震災以前から大きな問題となっていました。また、人口減少や少子高齢化、マイカーの普及などにより、公共交通機関の利用者も減少は一途をたどっています。
2011年4月、復興支援のため釜石にやってきた荒木隊員は、釜石市における「持続的な公共交通機関」を確立するというミッションを請け負いました。
荒木隊員は、行政関係者、自動車メーカー、地域住民の代表、学識経験者など各種関係者の調整役を任されました。関係者間で定期的に開催される「モビリティ戦略会議」の事務局を運営しながら、乗客となる地域住民の声を直接聞いて回り、運行を担う地元タクシー会社・バス事業者との協議を重ね、そこから集約された意見を行政に伝えました。
利便性の向上とコスト削減に向けた調整、運行範囲の拡大や経路・ダイヤの見直しは数年に渡って続けられました。その結果、実証実験期間中に利用者数は倍増し、運行地域も拡大。2015年4月には、実証実験から本格運行へ移行する運びとなりました。
被災者の交通手段の確保、そして過疎地域での持続可能な交通システムとして、オンデマンドバスは他地域からも注目を浴びています。 そして「家の近くまでバスが来てくれる」「市内の病院まで乗り換えなしで行けるようになった」と、喜んでくださる方が増えたことが、何よりうれしい出来事でした。
▽参考文献
・TOYOTAココロハコブプロジェクト「釜石市とオンデマンドバスの実証実験を開始いたします。」
・釜石市役所「オンデマンドバスの実証実験運行においてトヨタ自動車との協定に調印」
二本松史敏さん(釜石市役所)
釜石市では、東日本大震災津波の影響により、沿岸地域の多くの住民が住居を無くし、長い避難所生活を余儀なくされました。その後、仮設住宅が整備されたことにより被災者は一時的な住居の安定は取り戻しましたが、今までと違う場所での生活には様々な苦労や戸惑いがあったと思います。特にも高齢者にとっては慣れない地域での生活に加え、買い物や通院のための移動手段の確保が緊急の課題となっていました。 この課題解決の一つとして取り組んだのがオンデマンドバスでした。 市が主体となってバス事業を立ち上げるため、いろいろな方々から協力をいただき平成24年10月になんとか運行を開始するに至ったものの運行開始以降も地域住民や運行事業者、監督官庁である運輸支局等々、各方面との調整事項が山積しておりました。 初めての事業でもあり、運行に漕ぎつけるだけでも手一杯で、諸々の調整事項の解決に途方に暮れる中、彗星(容姿ではありません)のごとく現れたのが釜援隊の荒木さんでした。
リージョナルコーディネーターという言葉を初めて耳にしましたが、荒木さんには、モビリティ戦略会議の事務局をはじめ、住民説明会の段取りや運行事業者との調整など行政と各関係者を繋ぐ役割を担っていただき、その名どおりの手腕を如何なく発揮して頂きました。などと表面的な言い方をすればカッコ良い立ち回りをした印象を受けますが、実際は各関係者間の意見の板挟みに合うことも多く、単純に調整役という言葉では片づけられない役割だったと思います。 しかし、荒木さんの仕事に対する情熱やひたむきな姿勢が徐々に周りの人たちに伝わったことにより困難な部分を克服し、業務の継続が保たれたと感じています。また、運行開始時点から携わっていたわけではありませんが、オンデマンドバス業務の基礎を築いてくれた方だと思っています。 2年間という短い期間ではありましたが、確実に釜石に足跡を残した1人だと思います。
担当隊員より
マネジメント(第一期/2015年4月卒業)
荒木淳