担当隊員:手塚さや香
エリア:林業
目指すビジョン: 釜石らしい価値を生み出す
日本各地で急務とされる、林業の担い手育成。釜石市では「釜石地方森林組合」が中心となり、林業振興に取り組んできました。津波により事務所が流され、役職員 の尊い命も失った釜石地方森林組合。甚大な被害を受けた一方で、英国の金融機関バークレイズグループからの支援も決定しました。2014年に始まった新たな事業が「釜石・大槌バークレイズ林業スクール」(以下、林業スクール)です。
三陸沿岸の豊かな海の幸が印象的な釜石ですが、実は市の総面積の9割を森林が占めています。「森は海の恋人」と言いますが、釜石の水産業の発展にも、林業は欠かせない存在なのです。また、かつて新日本製鐵の企業城下町として栄えた釜石では、現在も間伐材を活用したバイオマス燃料を新日鐵住金釜石の石炭火力発電所に供給しています。内閣府が推進する“環境未来都市“にも指定されている釜石市では、林業の発展がまちづくりの根幹に関わっています。
目指しているのは、林業の振興だけではありません。林業振興による地域の復興と発展、体験プログラムを通じた交流人口の拡大…このような地域貢献も、釜石地方森林組合の目指す姿だと組合の参事は語ります。このようなビジョンを実現するべく、林業スクールのマネジメント・事務局運営を任されたのが、釜援隊第三期の手塚さや香隊員でした。
林業スクール開講の数か月前に、釜援隊として森林組合に配置された手塚隊員。着任早々、カリキュラムの策定や講師陣の招聘、 受講生の選定等、スクールの事務局運営を一手に任されました。また、前職である新聞記者の経験を活かし、HPやブログ、プレスリリース等を用いた情報発信にも力を入れました。その甲斐あって、市内外から多様な年齢の受講生が釜石に集まり、民間主導の林業の人材育成 の先進事例として全国 のメディアに取り上げられました。2015年4月~2015年末の間に、大学や各地の地方議会議員、林業関係者など 、約400名の視察やボランティアが全国から訪れています。
自身もIターン者である手塚隊員は、林業に関わる生業を増やし、これから釜石に住みたいと思っている人達の受け皿としたい、と言います。林業スクールの運営に加え、地元の木材を用いた製品開発にも精力的に取り組む手塚隊員を、森林組合の参事は「釜石に吹く新しい風」と呼びます。そこには、ヨソモノ・ワカモノの視点に加え、女性ならではのアイディアも活かされているそうです。
林業スクールは2017年まで開講し、約40人の受講生を輩出する予定です。専門的な研修に加え、一人でも多くの人が林業に関心をもってくれるよう、一般向けのセミナーも開催されています。是非、釜石の森と、それを支える人々に会いにいらしてください。
▽参考情報
・釜石地方森林組合HP
・手塚隊員と高橋参事が共に出演したラジオはこちらから!
釜石地方森林組合
手塚さや香
加賀洋希さん(釜石地方森林組合職員)
自分は県内の内陸部で働いていましたが、地域の復興に役立ちたいと思い、東日本大震災後に戻ってきました。そして組合に勤め始めて、釜石大槌バークレイズ林業スクール1期生として学びました。スクールの一環で開催しているオープンセミナーや組合で企画するイベントには、組合の高橋参事や手塚さんがいろいろなつながりで講師や参加者を呼んでくるのですが、そういったつながりを持っているのがすごいなあと思いますし、自分もそこから自分のつながりを広げていかなくてはいけないと感じています。
あと、昨年(2015年)から、手塚さんの発案で釜石のスギで作った一合枡を販売していて、そういう企画を見ていると、自分の考えを言葉にして、実現させているなあと思います。
組合ではお酒を飲む機会が多いのですが、そういう席でも手塚さんからよく鋭い指導を受けます。だいたいは的確な内容なので、やさしく言ってもらえたらなお良いですね(笑)
釜石はもちろん岩手県全体をみてもやはりいちばんの魅力は一次産業であり、震災後とくに一次産業の重要性は再評価され、農林漁業に可能性を感じ、自分もかかわりたいと考える若い世代も増えてきていると感じます。一方で、農業に比べ、林業や水産業はどうやったらその仕事に就けるのかもわかりにくく、まだまだ情報発信にも課題が多い業界です。
そんな中で、被災地の復興に尽力してくださる英国に本社を置く金融機関バークレイズグループの支援を頂くことで、全国で活躍する林業や木材産業関係者を釜石に招くことができ、「林業スクール」受講生はもちろんのこと、釜石地方森林組合職員や私自身、岩手県や釜石市の林業行政の担当の方々にとっても大きな刺激になっています。
この事業は3年間支援をいただくものなので、第1期(2015年)より第2期(2016年)、さらに第3期(2017年)とますますパワーアップし、全国から注目を集め続ける事業にしていきたいと思います。